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ASEAN圏内で高まる安倍首相の影響力

(Translated from "asia sentinel", 18 March, 2016)

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東南アジアにおいて、日本は無敵といっても過言ではないほどの支持を獲得している。2015年のPew国際関係調査によれば、東南アジア4国の回答者のうち約80%が日本に好感を抱いていると回答した。

中国の軍事力を裏付けとした南シナ海への進出がたびたび新聞の一面を飾る中で、この緊張した地域における日本の影響力はここ数年で、以前より増して重要なものとみなされている。

安倍首相は2012年に再選されて以来、政権の方針として安全保障の国際協力体制を整えることに腐心してきた。そして、その主な相手国は中国と南シナ海における紛争を抱えるフィリピンやベトナムであったが、ラオス東ティモールといった小国を尊重することも忘れなかった。

国境紛争の中で、安倍首相は日本の地政学的な立ち位置を向上させ、既に確立している経済的な指導力をさらに強力なものにしようと試みている。東京(と米国のエスタブリッシュメント)の関心は、今後10年のアジア太平洋地域の秩序にある。冷戦時に築かれた日米同盟のシステムを維持し、さらに、新たな互恵関係へと発展させることができるだろうか。
あるいは、太平洋地域の主導権は多くのエネルギーと資源を近隣諸国との連携に費やしている中国に握られるだろうか。東京は拡がりつつある中国との国境紛争における立場の相違と歴史認識問題、そして南シナ海にとどまらない中国の野心的な行動から、このシナリオへの警戒感を強めている。
一方でASEAN、10の東南アジア諸国から構成される比較的緩やかな連合体は、ASEAN自身の経済的な影響力を確立させることを望んでおり、ASEAN外の国家に対し介入を控えるよう呼びかけ、ルールに従って行動するASEAN諸国を信頼するように求めているようだ。ただし、この呼びかけが意味のあるものとして扱われるためには、ASEANはさらなる経済成長を遂げる必要があるだろう。

結果として、日本は米国との防衛協定を強化すると同時に、東南アジアとの依存関係を深め、相互の経済成長に向けて強い握手を交わした。ここ数年の日本の新しい行動計画は、東南アジアを巻き込み、東・南シナ海への侵略を進める中国への包囲網を築くことにあるようだ。しかし、日本の関心が国境問題を共有するベトナム・フィリピンとの強力や、海上における安全保障体制の確立にとどまることはないだろう。

中国が最近表明した「一帯一路構想」は多くの憶測を呼んだが、それが日本の戦略と一致していることを発見した者は多くはなかった。1990年以前より、日本は東南アジアへのインフラ投資によってこの構想を実現しようと試みたことがあった。一帯一路構想は、3つの柱から構成される。2つは陸路であり、よく知られているように、ミャンマーのMawlamyaing港からタイ・ラオスを経由して中央ベトナムのDanang東西を結ぶ回廊と、南の萬国からホーチミン市を結び、将来的にはミャンマー南部のDawei港に至る回廊だ。そして最後の回廊こそが、ブルネイ・マレーシア・インドネシア・フィリピン、そしてシンガポールに至るまでの港湾と情報、通信、そして科学技術の統合を目指すASEAN経済回廊だ。

日本のインフラ攻勢は東南アジア諸国が経済統合を志向し、硬軟両面におけるインフラを求めるにつれて勢いを増した。2015年の末にはASEAN経済共同体も発効し、統合への動きに弾みがかかっている。

中国の一路一体構想のうち、東西を結ぶ第一の回廊についてはほぼ計画通りに完了した。各国政府はエネルギー・観光・大規模農業への投資を呼びこむために協力した。これを主導したのは日本の民間企業であった。「太平洋とインド諸島を陸路で結ぶ」という野心があった。東南アジアは、いまや日本にとって最大の投資先となっている。東南アジアにとっても、日本はEUに次いで大きい投資国だ。貿易の側面においても、東南アジアは日本にとって既に中国につぐ二番手の貿易先だ。
日本にとって、東南アジア北部とインド洋、すなわち中東からの石油輸入ルートへのアクセスは計り知れない価値を持つ。

日本にとって喫緊の課題は、南シナ海の安全保障対策としてインドネシア、フィリピン、そしてベトナムといった諸国と共同訓練を行い、練度を向上させることにある。かつての日本の防衛戦略は消極的なものであったが急速に方針を転換し、空中警戒活動や他国への寄港を推し進めている。ベトナム中部の軍事施設を利用しており、将来的にはフィリピンのPalawan諸島やマレーシアの北Borneoにも寄港すると見られる。東南アジア諸国は、既に中国包囲網への参加を決意しつつあるのだ。

日本とフィリピンは、昨年初めての共同海上訓練を実施した。今年のはじめには、日本からの防衛装備および技術の供与に関する協定に署名した。フィリピンは軍の近代化に腐心してきたが、これによって中国の拡張主義を牽制することが可能になる。日本とベトナムも、昨年史上初の共同海上警備訓練を実施し、海軍も今年になって共同演習を行った。さらに、二国間で常設の海上防衛連携体制を構築するという。
一方、安倍首相とインドネシアのJoko Widodo大統領は昨年日本において、やはり海上防衛の連携を強化する協定に合意した。これによって、将来的には日本の軍事技術がジャカルタに供与される可能性がある。

東南アジア諸国はどうやら、日本が東南アジアに寄せている経済的な関心が諸国の利益とも一致していると判断したようだ。日本が東南アジアに寄せる強力な投資と期待は、時間をかけて両国の間に信頼関係を築いてゆくだろう。東京はASEANと二人三脚をしながら、日本の利益にかなったアジア太平洋地域の秩序を作りあげるチャンスを手に入れた。

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