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憲政の危機―権威主義体制へと突き進むポーランド

(Translated from "New York Times", 18 March, 2016)

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ポーランドは悲劇的な憲政の危機に見舞われている。右派の指導者らは憲法を尊重する意志さえないことが明らかになり、最高の裁判所であるはずの憲法裁は公然と無視されている。与党である「法と正義」は、たちまちのうちに政権を法に優越するものと位置づけ、様々な反対や警告の声、さらには欧州連合や米国、国際的人権団体からの公式な通告さえも押し切って権威主義体制を敷いた。

政権を背後から操っているヤロスワフ・カチンスキ党首は、あろうことか諸外国からの声明を冷戦時代におけるソ連からの介入になぞらえてみせた。一連の危機は、カチンスキ党首と盟友であるハンガリーのヴィクトル・オルバン首相がいかに"民主的"であるかを示しているというのだ。もちろん、ここでいう民主的とは「民主的な選挙で決定された多数勢力には、国内外のあらゆる制約をはねのけて、無制限に国制を上書きする権利がある」という意味でしかない。

ことの始まりは、前政権が10月の選挙で「法と正義」に敗北を喫する直前に、15名の憲法裁判事のうち5名について後継者を指名したことである。このうち3名はまもなく前任者と交代することになっていた。しかし、政権を奪取した「法と正義」は5名全員の信任を拒否し、独自に別の5名を判事として指名した。憲法裁は、前政権が指名した5名のうち3名には憲法裁判事に任命される権利があるとの見解を示したが、政権は耳を貸さなかった。それどころか、「法と正義」が支配する国会は憲法裁の影響力を弱める新法の制定に動いたのだ。たとえば、憲法裁が拘束力のある判決を出すためには、判事の3分の2以上の賛成が必要とされた。先週の水曜日、憲法裁はこの新法を違憲とする判決を下した。しかし、政権は判決を黙殺する構えを見せている。

金曜日、欧州評議会の特別委員会は報告書を公表し、ポーランド政府による体制変更の試みは「法の統治のみならず、民主主義の機能さえも危険に晒す」と指摘した。しかしワルシャワはいまだに喧嘩腰であり、「ひとつの参考意見として受け止める」と声明するに留めている。

特別委員会の意見に拘束力はなく、ポーランド共和国憲法も政権が憲法裁を無視した際の罰則を定めてはいない。しかし、欧州連合と米国はこれを看過するつもりはない。公然と司法権を無視するカチンスキ党首の姿勢は、自由民主主義に対する受け入れがたい脅威に他ならないからだ。

欧州連合の執行部である欧州委員会は、一刻も早く欧州評議会の報告書に基づき、「法と正義」の横暴がすでに一線を越えていることを宣告するべきだ。ポーランド欧州委員会における投票権を停止するなどの罰則も検討されるべきだが、ハンガリーが拒否権を行使するため、これは現実的には難しいだろう。

ポーランドは長年にわたり、アメリカの親密な同盟国であり、ロシアに対する真の防波堤であるとみなされてきた。7月のNATOサミットでも議長国を務める。このサミットは、ポーランドにとって長年の夢である国境内のNATO軍を増強する機会でもある。権威主義体制の理想と安全保障という現実の間で揺れるワルシャワは、ワシントンからの圧力にどう反応するだろうか。

 

Poland's Constitutional Crisis