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Authoritarian Today

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もしトランプがTPPの交渉を仕切り直したら?

(Translated from "The New York Times", 16 March 2016)

 

もし合衆国がかのTPP(環太平洋自由貿易協定)において、情けないオバマの代わりに、国益を尊重するドナルド・トランプのようなタフなネゴシエーターを使うことができたなら、いったい何が得られていたことだろう?ねえ皆さん、正直なところ、あなたが家を売るとき、その交渉をオバマに任せようと思うだろうか?筆者は過去の事例を調べ上げ、トランプならこんな具合に交渉をまとめていただろう、という予測を立ててみた。

トランプはまずこう言うだろう。「こんな交渉は赤子でもできる!」というのも、既に米国はTPPの11の加盟国が米国に輸出する商品の80%を無税で受け入れており、しかもそれらの加盟国は米国からの輸入に課税しているのだ。TPPによって18,000にものぼる米国製品への関税を廃止させることができれば、我々は国内の生産水準を向上させ、より多くの商品を輸出できるだろう。「我々はどんどん輸出してやるさ。それもイヤというほどね!」トランプの声が聞こえてくるようだ。

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なんといっても、米国の総生産は2105年末、過去最高水準に達した。ロボットは増え人は減ったが、2010年と比べて90万人の製造業の雇用を創出している。安いエネルギーと熟練労働者、そして優れた法の統治のためだ。土俵さえ整えてやれば、我が国の産業は世界で戦える。トランプならこう言うだろう、「少しは数学をやれ、愚か者め!」我々の平均関税率は既にわずか1.5%だが、TPPの加盟国のそれはかなり高い―たとえばベトナムは自動車と機械について50%も課税している―こうした関税を取り除けば、米国の製造業者は濡れ手に粟にちがいない。

エリート主義者のオバマと違って、トランプはブルーカラー労働者のこともきちんと配慮してくれる。そこで彼なら、加盟国が合衆国の市場に自由に参入できる代わりに、労働者が独立した労働組合を組織する権利を認めさせたに違いない。労働組合はみずから代表者を選び、交渉の末にあらゆる児童労働と強制労働をやめさせる。トランプは加盟国に最低賃金法の遵守も認めさせ、健康や安全の基準を徹底し、米国の労働者と同じ条件で競争ができるようにさせただろう。

また、トランプなら電子機器に対する関税を全廃させたに違いない。新しい市場に参入するために企業はソースコードを共有する*1必要がなくなり、TPP加盟国のあらゆるクラウドコンピューティング・サービスは米国製に取って代わられる―合衆国万歳!

トランプは女性を尊敬する。そこで、すべての加盟国に―特にマレーシアに―タイやミャンマー、そしてバングラデシュからの人身売買を禁止する具体的な手立てをとらせ、同時に犠牲者を支援する人権団体の窓口を設置させるだろう。従わなければ、貿易から閉め出せばいいだけのことだ。(トランプの眼をごまかすことはできない)

さらに、トランプは民間企業の競争力を確保するため、ベトナムの石油会社のような国営企業の運営に制限を課すだろう。こうした国営企業はしばしば、米国の民間企業から不当に市場を奪ってきた。もちろん、企業秘密を盗んだ犯罪者はどこに逃げても厳罰を免れない。

「合衆国からカネを巻き上げさせるな!」トランプは叫ぶ。知的財産に詳しい彼なら、今や最大の輸出財である米国のソフトウェア産業を守りつつ、大製薬会社とジェネリック医薬品会社とで利害が対立している新薬の保護期間の問題をみごとに解決してくれるだろう。誰もが何かを手に入れるが、誰も全てを手に入れることはできない。「芸術的な契約だ!」

トランプはもちろん加盟国に、象牙やサイの角の密売の徹底的な取り締まりを要求する。同時に、過当漁獲を煽っている各政府の補助金も廃止させるに違いない。

多くの中華料理店をホテルに抱えているトランプは、米国がTPPの旗を降ろしてしまえば、太平洋の友好国はみな中国が主宰するR.C.E.P(地域内包括的経済提携協定)に走ってしまうことを知っている。これは知的財産権をろくに保護しない協定で、労働者や環境の保護ももちろん、国営企業に対する規制さえも存在しない。

こんな素晴らしいTPPこそが、国益を重視するトランプなら簡単に実現できたのだ!しかしよく考えてほしい。これは、まさにオバマが実現したものと同じではないだろうか?

こんな事実を、読者諸君は今の今まで知らなかったかもしれない。もっとも、トランプ本人ですら知らないのだから仕方がない。サンダースは隠しているのだ。ヒラリーも残念ながら隠したいようだ。

あらゆる貿易協定は完璧たりえない。どんな条約もすべての雇用を保障し、経済を全面的に回復させることはできない。その代わり、貿易によって失業した労働者を手厚く保護する必要があるというだけなのだ。だからこそ、TPPのような賢明な条約は、我々の効率的かつ創造的、そして世界市場に広がる経済活動を確実にし、同時に安全保障体制を強化するものとして尊重しなければならないのだ。さもなければ、米国は多くの同盟国を失い、米国のそれとは相反する体制へと接近してしまうだろう。

国民のために有益な条約の交渉に骨を折った大統領に感謝を捧げたい。

 

Let Trump Make Our TransPacific Trade Deal

 

*1:訳註:自信はありませんが、現地企業と合弁会社をつくることを指しているように思います