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私がトランプを支持する理由―ある退役兵から共和党エリートへのメッセージ

(Translated from "New York Post", 5 March 2016)

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まず自己紹介から始めさせていただこう。私は長年の共和党員であり、保守的な考え方の持ち主だ。1988年以来、民主党に投票したことは一度としてない。自分は保守主義者であると、いつも自覚してきた。だから、多くの保守系メディアや保守派の政治家までもがドナルド・トランプ候補をバッシングするのを苦々しい思いで見てきた。なぜなら、トランプを支持する私はもはや保守派の仲間とはいえないかのように思えたからだ。

もし読者のうちに政治家の者があり、私ような立場の有権者の支持を失うことを恐れており、しかもその数が決して少なくないように思えるのであれば、ドナルド・トランプ候補への対応を検討し直すことをおすすめしたい。では、その理由を説明させてもらおう。

私は、ここ20年間もの間ワシントンで保守系メディアを購読し、それは常に私に保守主義の真似事を一通り演じて見せた候補者に一票を与えるよう命じてきた。どの候補者も、当選後は我々有権者に感謝するそぶりこそ見せたものの、いざ彼らがその仕事に取りかかり、政策の内容が明らかになると、我々に公約してみせた内容などすっかり忘れてしまっていることがすぐにわかった。

2012年、我々はマサチューセッツリベラリストで、州知事として自信満々に個別社会保障法案に署名したMitt Romney候補に投票するように命じられた。その前は中東に民主主義を配達することをその使命としたジョージ・ブッシュだった。その前はBob Doleで、彼は「障害を持つアメリカ人法」の制定の尽力した。

勿論私はこれらの候補者に一票を与えた。そして、それを後悔しているわけではない。しかしながら、私は彼らが保守主義者としてベストの選択だったから投票したのではなく、単に左派を権力の座から遠ざけてくれるのであれば誰でもよいから投票したにすぎないのだ。

だから、少なくとも私のようなここ四半世紀の記憶が明瞭な有権者にとっては、保守系メディアが、ドナルド・トランプは保守的ではないから共和党員は支持すべきではないと喧伝しているのは、まったくぶざまで的を射ていない指摘であるとしか思えないのだ。「真に保守的な」候補者など、今まで現れたためしがないのだから。

外国の利益にしか興味がない"保守主義者"

第二に、有権者にトランプを落選させるよう呼びかけている「保守主義者」たちこそ、真に保守的な発想を有しているようには思えないのだ。保守という言葉は、今や極端な思想を崇拝する人々の手に渡ってしまい、政府や社会がかつてそうであったようなあり方を示す本来の意味を失ってしまっているように思えるのだ。

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保守主義は今や、新左翼に乗っ取られた民主党が導入したウィルソン流のグローバリズムに回収され、狂信的なリバタリアン経済学、および文化戦争の中で出現した宗教保守の思想と結びつけられているように思える。未だ誰もこうした思想が敵視しているはずの民主党や左派の発想と軌を一にしていることを認識しておらず、まして懸念してもいない。

こうした潮流の中で、私がその中で育てられたような古き良き保守主義の伝統は失われてしまった。保守主義は市場と資本主義を信頼してはいたが、今のリバタリアンのようにそれを盲信するものではなかった。
かつて保守主義は、国際貿易の場においてアメリカ以外の各国はそれぞれの利益のみを考慮しているために欺瞞を振りまきながら自由貿易を主張しており、それがあらゆる場合において公正な市場開放ではないことを理解していた。保守主義は政府の第一の使命が市民および国家への奉仕であることを知っていた。また、我々の文化や国内に基盤を持つ企業の維持こそが重要であることも自覚していた。

これら全ての要素がもはや失われているように思える。保守主義は今やまるで精神分裂病者のように自由を盲信し(しかしマリファナと中絶は嫌悪する)、アメリカを世界の警察官にしようと試みるリバタリアンの一セクトに堕してしまった。アメリカ社会をハリウッドとマスメディアの裁量に任せることを憂慮していたはずの人々が、どうしたことか全生活を国際市場の裁量に任せることには合意してしまったのだ。

第三の理由は、イスラム過激主義の問題だ。最初に述べておくが、私は2度にわたり海外派兵を戦った熟練兵だ。1%しかいない、保守派が必要不可欠であったと主張する2つの戦争に両方参戦した人間として読者とすべての保守派に質問したいのだが、保守主義はいったいつから、他の主権国家に介入したり、民主共和制を武力で押しつけたりすることをその使命と自任したのだろう?
私は戦争の痛みや悲しみを完全に理解している。また、私は「因果応報」など信じないし、世界と同じ事をしていればすべてがうまくいくといったナンセンスにも与しない。だが同時に、なぜ保守派が9.11の問題はイスラム世界への侵攻と民主主義の押しつけによって解決されると信じ込んだのか、さっぱり理解できないのだ。
15年、いや10,000年が経過しても、なお保守派は当時のことを検証する義務から目を背け続けるのではないか。そして、ますます多くの若者をイラクに送り込み、イラク人が望んでもいない体制を維持するために血を流させるのではいだろうか。

トランプが国民の誰もが知っていることを言ってのけたとき、国内に沈黙が流れた。他でもなく、彼が魅力的な欺瞞の道を選ばず、イラク戦争は間違いであった口にしたときだ。自称「保守派」はいつものように、「彼はなんて無神経なんだ!」という反発に終始した。

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さらに悪いことに、ジェブ・ブッシュ候補はブッシュ大統領こそが「国民を安全にしてくれた」と主張した。しかし私は、ブッシュ大統領が私を安全にしてくれなかったことを保証できる。私やその他の軍人たちは「国民」にさえ含まれないのだろうか?むろん、我々はその命を国家に捧げることを誓った身の上だ。その誓いは今も揺らぐことがない。しかし、大統領は我々の任務がアメリカにとって必要で、国益にかなったものとなることを期する結果責任を負っているのではないだろうか。

イラクアフガニスタンに民主主義を配達して以来、50,000人のアメリカ人が戦死し、あるいは障害を負ったが、本当に国益など存在したのだろうか?私にはそうは思えない。ウィルソン主義者と違い、私は真の保守主義者として、アメリカは他国の利益ではなく自国の利益のために戦うべきだと信じている。少なくとも保守主義者を自認する者には、ぜひ私が職業政治家がブッシュ大統領が国民を安全にしたと口にしてみせたときに感じたいらだちを理解してもらいたい。

丁寧さなど重要ではない

ドナルド・トランプは、共和党候補の中で唯一のアメリカの国益を真剣に考慮している候補であるように思える。そもそも、問題を提起できるのがトランプだけなのだ。確かにトランプのムスリム入国禁止発言は言い過ぎであったかもしれない。しかしそれは問題として検討されるべきであり、トランプの問題提起は間違いではなかった。トランプがイラク戦争について当たり前のことを言ったときと同じように、保守派はまたもや耳をふさごうとした。つまり、保守であることは今や問題から目を背け、「イスラム教徒はいつも平和主義者だ!」とか「我々の敵はイスラム過激主義であってイスラム教ではない!」といったおとぎ話を繰り返すことを意味しているのだ。残念ながらそういうことなのだ。少なくとも我々がトランプを支持する理由がわかる人物に大統領になってほしいものだ。

第四に、私はドナルド・トランプの無礼かつ挑発的な言動など塵ほども気にかけていない。そして、読者たちにも同じく気にしないように勧めたい。私は政治的な議論が再び30年前の、少なくとも今よりはよい方法で行われることを望んでいる。しかし、民主党がそうしてくれる様子はないし、結局トランプ以外の誰もそれを実現できそうにない。

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過去15年にわたって、私は民主党全国大会の議長がブッシュ大統領は9.11を事前に把握しており、あえてそれを放置したことを「多くの国民が支持している重大な懸念」であると主張するのを目にしてきた。また、副大統領が黒人の支持者に向けて共和党は君たちを再び奴隷にしようとしていると呼びかける場面とか、Harry Reidが明確な証拠もなくMitt Romneyが脱税をしていると主張する場面とか、列挙すればきりが無いほどの、おそらくは読者も記憶しているであろう、数々の無意味な陰謀論と政治ショーを目撃してきた。

すると、読者は私にこう言うかもしれない。トランプは人間としてなっていないから落選させるべきなのではないか、と。冗談はよしてほしい。既に候補者の人柄を云々している場合ではないのだ。

第五に、私はトランプが大きな政府を志向していることを問題にしない。それは良いことではないかもしれないが、一方で悪いことでもない。なぜなら、すべての共和党候補について同じ事が言えるからだ。申し訳ないが、「共和党の勝利は小さい政府の実現を意味する」というセリフは有効期限が切れている。誰が勝とうと小さい政府にはならないだろうし、それを理由にトランプを批判しても仕方のないことだ。

第六に、トランプはその仮面の下に何らかのイデオロギーに基づく夢想的な目的を隠している可能性はあるにせよ、少なくとも世界の利益ではなくアメリカの利益のために行動する姿勢を見せている。減税ではなく財政出動、偽りの自由貿易協定に中身のない「構造改革」のアピールと市場化の潮流の中で、少なくともトランプだけは国益の何たるかを理解しているのだ。他の共和党候補とワシントン、そしてメディアは保守を名乗りながら、国益ということを何も考慮していない。

トランプ支持者への中傷

ルビオはブッシュ大統領の血に塗れた支配を繰り返す結果しか招かないだろう。若者は血を流し、国富は国民の利益と関係のない誰かのために流れ去るばかりだろう。

クルーズはまだマシかもしれない。しかし、彼が民主主義を布教することの誘惑に抵抗し、戦争を引き止めることができるかは不透明だ。だが、クルーズも含めたトランプ以外の共和党候補は似たり寄ったりだ。なぜなら、彼らは国家が国民のために奉仕する義務を負っており、自由貿易の名の下に他国に恩恵を与えることはその任務ではないという事実を、いつまでも認めたがらないからだ。

以上のことをよく熟慮してほしい。アメリカが破壊されてしまう。労働力人口の半分が仕事を探すことすらしなくなり、大規模なイスラム教テロリストの脅威に直面し、政府は基本的な機能さえ果たすことが出来なくなる。一方で、保守派はプランド・ペアレントフッドへの支出をとりやめたり、同性愛者の婚姻を禁止することが今日における重大な課題であるかのようにふるまい、ドナルド・トランプをピエロ扱いすることに汲々としている。もしこのありさまを深刻かつ嘆かわしい問題であると思えないなら、君はどう考えてもおかしい。

ドナルド・トランプこそが救世主であり、理想の候補者であると考えているわけではない。決してそうではない。悲しいことだが、それを得ることは私が生きているうちには叶わないだろう。
なぜ人々の心が共和党主流派から離れ、共和党を破壊し、むしろヒラリーを利する状況になっているのか理解するべきだ。トランプについて妥当する批判は多くの場合他の候補にも妥当するか、あるいは的外れなものなのだ。

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読者たちが私の意見に説得され、トランプを支持してくれるようになるとは期待していない。ただ、少なくともこの状況について考えてもらい、私をはじめとするトランプの支持者たちが単なるニヒリスト、低学歴者、失業した田舎者ではないということを理解してもらいたいのだ。我々のうちには、保守主義の何たるかについて熟慮した上でトランプを選んでいる者も少なくないのだ。それでもなおトランプは嫌いであるというなら、君はどうして保守主義がこれほど明らかに民心を失い、あのにっくきトランプに投票が集中する事態に陥っているのか、よく自問してもらいたい。

私はトランプを支持する。私の父もそうだ。父も私も、この国のために戦った男だ。私の父は40年間を民間企業で電話網を維持するために費やした。私は20年間を陸軍に捧げ、合衆国の防衛と法の執行のために尽くした。国家のためにどういう貢献をしたか、はっきりと言って胸を張れる人間が読者の中に居るだろうか?どこでその資格を手にしたのだろうか?さらに重要なことは、なぜそれが真に国家のためであったと言えるかということだ。
私は穀潰しの男どもや、「福祉のお姫様」と呼ばれる女どもがやっているような運動に参加したいとは思わない。彼らは間違った候補を支援している。誰とでも共闘しようとするのは、まさに左翼のやり方というものだ。
もしこの記事を読んで何も得ることがなく、保守派が私を知らんぷりして去って行くのであれば、その時保守派は私のみならず、おびただしい数の私と同じように考える有権者から去って行くということになるだろう。私には、それが保守派にとって賢明な選択であるとは思えないが。

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