Authoritarian Today

Check the Authoritarianism out through foreign coverage
ロシア ハンガリー アメリカ 日本 ギリシャ イギリス ポーランド

トランプ候補の支持者にまつわる5つの「神話」

トランプ候補の支持者にまつわる5つの「神話」

(Translated from "POLITICO", 3 March 2015)

トランプを批判する人々が誤解している5つの事実―トランプ無敗神話の謎に迫る

f:id:nyaku37:20160304212228j:plain(photo quoted from original article)


トランプを批判する論者は、しばしばトランプの支持者たちが頑迷な保守原理主義者であり、野蛮な群衆であり、学位さえ得ていない低学歴者であると主張する。これは完全な誤りとはいえない。じじつ、嘆かわしいことではあるが、支持者たちには幼稚な人々が多いかもしれない。
確かにトランプは、怒れる群衆や強硬な保守主義者を味方につけてライバルたちを下してきた。しかし、すでに終了した15の州党員大会を見たところ、どうもトランプは批判者たちの想像以上に支持者の裾野を広げているようだ。トランプ氏はすでに彼が意図している以外の人種、イデオロギーに属する層から支持を得ている。

この記事では、最新かつより正確なトランプ支持者たちの分析によって、なぜテッド・クルーズやマルコ・ルビオがトランプを打ち負かすことができなかったのか、そして、どうすればそれが可能になるのかを明らかにしたい。

トランプの支持者ついて言われている以下5つのことは、じつは「神話」に過ぎないのだ。

教育をうけていない者ばかりである

ブルーカラー層がトランプの支持者のうち多くの部分を占めているのは事実だが、学位を有している共和党員の間でもトランプは確実に支持を広げている。すでに実施された6つの世論調査によれば、大卒の共和党員の間でもっとも人気があるのはトランプである。別の6つの世論調査でも、トランプはやはり大卒者に2番目に人気がある候補だ。大卒者がトランプを明確に拒んだのはオクラホマ州だけであった。トランプを支持しているのは今や低学歴者だけではないのだ。
ただし、低学歴者はトランプ支持者の中心であり続けているのは事実だ。既往の党員大会において、低学歴層はトランプを支持する確率が11%高いことが判明している。トランプはまだどの州でも過半数を獲得したことはないが、スーパー・チューズデーのマサチューセツ党員大会ではブルーカラー票の60%を獲得した。


極右の保守主義者たちである

多くの保守主義者たちがトランプを愛している。しかし彼らは孤独ではない。トランプの声は、ライバルたちにはまねできない方法でイデオロギーの壁を越えているのだ。クルーズの声は「中道」を自認する者には届かず、いっぽうのルビオは保守派の取り込みに失敗している。ところが、トランプはすでに終了した党員大会において、どのイデオロギーを自認する層からも等しく支持を得ていたのだ。これは直近のメディアによる世論調査や他の投票からも明らかになっていることだ。
トランプの支持者たちは、特にトランプの「メキシコの国境に壁を築く」という発言に共感を覚えている。不法移民を最大の問題であると考えている有権者のうち、10%から20%がトランプの支持に回っている。ただし、トランプの優勢を説明するにはまだ不足といえよう。おそらく、イデオロギーではなく感情的なものがトランプの支持者を結びつけていると思われる。連邦政府に「怒り」を覚えるという有権者を取り込んでいるのだ。RAND社の調査によれば、世論調査で「私のような人物は、政府の方針になにも影響を及ぼすことができない」と回答している層は他の候補に86%も増してトランプを支持していることが判明している。

もし○○さえ理解してれば、トランプなど支持しないはずだ

過去数週間において、反対派がトランプを攻撃する主な理由は、彼が保守派の人物してはニセモノであるということであった。中絶にかんする頻繁な変節への批判、大量の土地を見せびらかすブルジョアであることや、民主党の政治家に長年献金を続けていたことへの攻撃がそれにあたる。
しかし、この批判はトランプ支持者たちに全く響かない。なぜなら、彼らも同じ足どりを辿ってきているからだ。

中絶への権利を支持している共和党の有権者は、平均的な共和党員よりもトランプを支持する傾向が強い。中絶賛成派の意見は共和党主流に無視されがちだが*1、じつは、肝心の中絶賛成派の有権者たちはこの現状をあまり問題視していないのだ。

トランプは中絶を応援するわけではないが、共和党の討論会ではプランド・ペアレントフッドについては称賛している。「プランド・ペアレントフッドについてトランプが語ったとき、彼は何か見つけたのだと思う」民主党の世論調査員、Stanley Greenbergは語る。「彼は飛びぬけた勘と洞察力を持っているのか、あるいは、世論調査員がトランプに『一般の有権者は中絶のことなど実は気にしていない』と入れ知恵したのだろう」

問題は中絶に留まらない。RAND社の研究は、伝統的な共和党の立場とは対極に位置する、労働組合に共感し富裕層への課税を支持する立場の共和党員が現れ、ますますトランプの支持に傾いていることを明らかにしている。
トランプが「変節漢」であるとの批判が行き詰まると、政治資金団体スーパーPACとその同調者たちはトランプのビジネスにおける失態、とりわけ「トランプ大学」事業の失敗を攻撃し始めた。その狙いは、トランプ支持者たちがその解体を熱望しているウォール街の一員としてトランプを描き出すことにある。

男しかいない

低所得者しかトランプを支持していないのと同じように、トランプの支持者たちは男性ばかりだという声がある。たしかに、今までの党員集会ではいずれも男性票が女性票を上回り、アラバマをはじめとするいくつかの州ではその差は二倍程度に及んだ。
しかし、州におけるトランプの女性からの支持率はいまだに24%を下回ったことがなく、それどころか多くの地域で30%を超えている。確実に言えることは、女性党員の支持無くして、トランプは最低でも十の州と数百の代議員を獲得し、代表選を勝ち抜くことは出来ないということだ。

冗談半分である

トランプの動きが2015年の間半ば無視されてきた理由の一つとして、まさか派手好みのビジネスマンが共和党の本命候補になるということをメディアや評論家が信じなかったということが挙げられる。ところが、当時の調査に反してトランプは支持を集めている。すなわち、メディアではなく草の根の無党派層ノンポリ層が、意識的に「トランプ大統領」への道を舗装してきたのだ。

実際のところ、トランプの支持層は嫉妬の的になるほど堅固といえる。マルコ・ルビオは多くの州で最後まで決断を迷っていた党員たちの票をかろうじて手にし、サウスカロライナ州で一敗地にまみれた彼は息を吹き返した。一方、トランプは最初から多くの州で安定した支持層を定着させていた。

先週までに行われた党員集会において、トランプは半分以上の代議員を手に入れた。熱狂した有権者たちはトランプに殺到した。トランプは強い絆で結ばれた有権者たちから確実に支持され、例外はクルーズの故郷テキサスだけであった。トランプ熱はまやかしなどではない。トランプは今まで選挙に興味が無かった有権者を引きつけ、実際に投票所に足を運ばせた。党員集会の投票率は、各地で過去最高を記録している。

www.politico.com

*1:中絶を支援する団体『プランド・ペアレントフッド・フェデレイション・オブ・アメリカ』への支援を中止する法案に反対した共和党議員はたったの3名であった