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ポーランドが欧州連合に期待するものとは?

ポーランド欧州連合に期待するものとは?

(Translated from "the Telegraph", 23 January, 2016 by Witold Waszczykowski, Ph.D,=ポーランド共和国外務相)

ポーランドは長きに渡り、周辺国からの侵略と共産主義の強制に苦しんできた。その後ようやく独立の民主主義国としての地位を手に入れ、つい先日も正当な選挙によって政権交代を勝ち取った新政権は、成立から2ヶ月も経ないうちにEU追放の危機に直面し、冷静さを失ったメディアによってその野心的な改革を阻まれている。

EUは、まさか難民危機や好戦的なロシアという大陸全体の問題に対処するよりも、ワルシャワと意味のない口喧嘩をしたいというのだろうか。EUはポーランドをまるで先生の言うことをきかない悪ガキのように扱っているが、ロマン派の詩人Juliusz Słowackiが述べたように、実際にはポーランドこそが欧州の中心なのだ。

問題を整理しよう。まず、憲法裁判所の裁判官入れ替えは、決して法の支配の否定ではない。前政権がその退陣の間際、最後の悪あがきとして政権に都合の良い判事を任命したため、15人のうち14人が前政権の息がかかった判事となっていた。これを多元主義の破壊と呼ばずしてなんと呼ぶべきか。事ここに至れば、裁判所の自浄作用に期待することは難しい。そのため政府は介入を試みたが、ブリュッセルの横槍によって国民の理解が進まず、事態はますます混乱している。むろん、ポーランド憲法裁判所の機能が法の支配のために必要であることはよく理解している。だからこそ、この問題についてヴェニス欧州委員会で自発的に意見を求めたのだ。

さらに、ポーランドの公共放送を立てなおそうとする政府の試みも、不必要な論争の的となっている。この改革の目的は公共放送の使命を明確にし、多元主義を擁護する存在として位置づけ、客観性のある報道を独立して行えるようにすることだ。ポーランド公共放送経営委員会は、独立した機関であり、EUといえど介入は許されるべきではない。我々の改革はメディアを国家の適切な監督下に置くことであって、当然のことながら欧州委員会の内政介入を排除する意味もある。独立国家として当然の主権を行使することが、なぜ「全ヨーロッパへの叛逆」と指弾されなければならないのだろう?

しかし、我々は引き続き欧州委員会に協力し、欧州全体の政策を画定する必要がある。ただし、我々はあくまで欧州連合の役割は国際条約の締結とその施行であり、より小さいレベルの機関で処理できる問題はなんでも小さい方で対処するという原則は、断固として守られなければならないと考えている。つまり、欧州委員会欧州議会は、ポーランドの内政問題への干渉を控えなければならないのだ。13日にも欧州委員会ポーランドに「法の支配の枠組み」を受け入れるよう要求したが、こうした要求が何ら法的な根拠を持っていないことはいうまでもない。我々としては、Szydło首相が欧州議会に出頭したことからもわかるように、これからも粘り強く対話を続けていくつもりだ。

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(Quoted photo from EPA)
ワルシャワへの不自然な挑戦は失敗に終わった。より大きな課題とは、欧州全体の危機に果たして欧州連合が対処できるか否かであり、その中でポーランドはいかなる役割を果たすかだ。加盟国はいまだに金融危機の後遺症に苦しんでおり、欧州連合の未来は真っ暗といっても過言ではないだろう。しかも前代未聞の難民危機が訪れ、国境開放という欧州連合の信念が試されはじめている。ポーランドの重要な同盟国であるイギリスも、もうじき欧州連合からの離脱を問う国民投票を行なうという。このように、欧州や今溢れかえる混乱と抗争の淵に立たされているのだ。

安全保障という欧州全体の問題に対しては、加盟国は協力し、欧州連合を通じた解決を図っていく必要があるだろう。しかし、それはポーランドの内政問題に対する主権を妨げるべきではない。こうした内輪もめこそが欧州連合を弱体化させ、より大きな課題に対処する力を失わせしめるのだ。

ポーランド欧州連合に対する関心は安全保障であり、それ以上でもそれ以下でもない。喫緊の課題は、欧州全体の経済を安定化させることだ。経済危機は多くの若者の夢と機会を奪い去った。失業と高まる不満は欧州統合という理念に大きな疑念を呼び起こした。これを放置しては、欧州統合のプロジェクトは大失敗に終わるであろうことは言うまでもない。これはポーランドの利益を考慮しても避けねばならない事態だ。

欧州連合は問題解決の主体であるべきで、問題の根源となるべきではない。そのためにも、ポーランド欧州連合の一員として責任ある立場を担う用意がある―しかし、これは加盟国が
内政問題においてその主権を発揮することを妨げるものではない。欧州連合を"欧州連邦"へと変えるような中央集権化の試みには、我々は明確に反対していく。それはどの加盟国、そして国民にとっても、必要なものとは言いがたいのだから。

ポーランドの民主主義は盤石だ。しかも、ヨーロッパから去ろうとしているなど、とんでもない誤解だ。それどころか、我々は強く、かつ真の意味で自由な欧州をつくることを夢見ているのだ。

(寄稿者のWitold Waszczykowski博士はポーランド外務大臣です)

 

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