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ポーランドは欧州の一員であり続ける

ポーランドは欧州の一員であり続ける*1

(Translated from "Finansial Times" 17 January, 2016)

反対派はその怒りを表明する権利がある

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(Quoted Photo by Reuters)

ポーランドは昨年の選挙で『法と正義』による保守主義政権を選択し、体制は大きな変化を経験した。ポーランドの国民の意志は明確だった。単独の政党が議会において絶対的多数を手に入れたことは、現代ポーランド史を振り返っても初めてのことだった。

ポーランドにおける一連の改革は、否応なく世界の耳目を集めている。国民は数々の不正が明らかになった司法当局への信頼を失い、国民保険制度や教育制度への不満が人々の心に渦巻いている。国民は官僚の形式主義と複雑すぎる税制に絶望しており、近代化された陸軍を欲している。非効率な行政システムによって投資が鈍り、雇用の回復もままならない中、国民は難民の脅威に遭遇し、欧州大陸をさまよい歩くテロリズムの影に怯えている。

ここ数年で、数百万の若者がポーランドからイギリス、アイルランド、その他の欧州諸国に移住した。悲しむべきことに、祖国において仕事にありつけなかったからだ。頭脳流出は深刻化するばかりだが、止めるすべは見つかっていない。

市民プラットフォーム」による前政権下で、ポーランドは一見して順調な経済成長を遂げていたが、実際には格差が拡大していた。大都市は好況に溺れたが、それ以外の多くの国民は共産主義時代のほうがマシだと考えていた。前政権は保守系の知識人をメディアから追放し、生き残ったごく小数の識者も当局の監視下に置かれた。与党の取り巻きが要職を独占したため腐敗はたちまち深刻化し、経済成長の足かせになった。

よく知られているように、ここ数週間、ポーランドは毎日のように反政府デモに直面している。少なくとも筆者は、民主主義国の主権者として、ポーランド国民はその怒りを表明する権利があると信じている。

今や人々の日常生活やメディアにおいて、多元主義が定着したのみならず強く支持されていることを確信した。多元主義を信じる多くの市民が政府を強烈に攻撃している。難民の分配割り当てを強く支持する者がいる一方、それを批判する者もいる。ブリュッセルを愛する欧州統合主義者にも、国民国家を尊重する孤立主義者にも発言権がある。ポーランドの民主主義と報道の自由は、今なお微塵も損なわれてはいない。

我々は、欧州の一員であり続ける。ポーランドは全ての欧州諸国と、とりわけドイツとの友好関係を維持することを希望している。近年に至るまでのポーランドの復興と繁栄は、政治・経済に両面におけるドイツとの連携によってもたらされたからだ。

また、ポーランド国民は欧州が直面している危機に対して、より主体的に義務を受け入れることを望んでいる。筆者は無実の市民を犠牲にするテロを深く懸念している。フランス、ドイツ、そして英国の国民が安全保障に危機感を感じるのは至極当然のことで、この不安を解消し、欧州に再び安寧を取り戻すことは全EUの指導者に課せられた使命といえるだろう。

難民危機の問題は、より積極的に議論されてしかるべきだ。我々には制御できない移民の流入について、本音で話し合う機会が必要だ。しかし、喫緊の課題は国境の制御を取り戻すことだ。そのため、ポーランドは1,100キロに及ぶ対EUの国境を監視下に置き、その義務を果たそうとしている。

しかし、ポーランドが警戒すべき問題は難民危機だけではない。ポーランドの隣国のひとつはここ数年において、外交的な強硬姿勢を強めつつある。EUの団結を示すためには、国際法を蹂躙する国家に対して加盟国が断固たる態度を示さねばならない。もしその国との取引が大きな利益をもたらすとしても、欧州統合の理念を手放してはならないのだ。

欧州は、地政学上の新しい局面を迎えようとしている。NATOの東端には増援が必要だ。抑止力を強化をするため、防衛予算は増額されねばならない。7月にワルシャワにて開催されるNATOサミットは、同盟国の結束を示す好機となるだろう。

平和、安全、そして共同体。欧州はこの3つの柱を、協力のもとに高く築き上げてゆかねばならない。
(by アンジェイ・ドゥダ, 6th President of Poland)

*1:ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領による記事です