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剥き出しの権力を手にして―日本・安部首相は選挙後に憲法改正を計画

剥き出しの権力を手にして―日本・安部首相は選挙後に憲法改正を計画

(from Forbes,11 Jan,2016 寄稿者:Stephen Harner)

前回の投稿において、筆者は徳川家康が1600年に関ヶ原の戦いを制し、265年間存続した江戸幕府を開いたことで終わりを告げた日本の「戦国時代(Warring States)」について言及した。

2016年夏に行われる参議院選挙で与党が勝利すれば、それは安倍首相にとって「関ヶ原の戦い」に勝利したと言っても過言ではない快挙となるだろう。安倍首相の政策に頑強に抵抗している最後の残存勢力を一掃し、年来の悲願である憲法改正、すなわち戦後レジームからの脱却が可能になるからだ。

参議院選挙は、議員たちの任期が切れる7月25日より30日以内に行われる。242人の議員のうち半数が改選される見込みだ。現在、自民党(LDP)と公明党(NK)の連立与党は、134議席を占めているが、このうち58議席が改選の対象となる。野党も63議席が改選されるが、そのうち42議席は最大野党の民主党(DPJ)の議席だ。

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(引用画像 by Kazuhiro Nogi/AFP/Getty Images)

これはすなわち、無慈悲な安倍首相が今後6ヶ月において示す力量次第では―7月には念願叶って―3分の2を超える支配多数の議席を確保し、歴史的に改憲への大きな足かせとなり続けてきた制約を取り除くことを意味する。

問題は、安倍首相が徳川家康のように、この戦に勝利できるかどうかだ。同時に衆議院の480議席も解散させることで、衆参同日選挙を行えば、反対派に最後の一撃を与えることが出来る。筆者の予想では、安倍首相はそれを実行に移すだろう。安倍首相のスローガンから、その影響をうかがい知ることができる。

2014年12月の前回衆議院選挙は、連立与党に325議席(LDP 291:NK 35)をもたらし、野党の155議席を制して支配多数を確保した。反対派の中で、民主党は73議席を占めるに過ぎなかった。第二の野党は、大阪の橋下市長による国政政党、維新の党(Japan Innovation Party)であった。

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(引用画像 by STR/AFP/Getty Images)

前回の投稿において、筆者は日本のメディアが橋下市長と安倍首相が会食の機会を持ったことに腰を抜かした様子をお伝えした。安倍首相が橋下市長とその党を選挙後の「改憲大連立」に招待することは想像に難くない。

筆者は、日本の民主党やその他の野党が、共産党を例外としても、かくまでに弱体化した光景を目にしたことがない。奇妙なことに、これは連立与党の政治、経済政策に反対する世論が存在しないということを意味していない。世論調査では、常に安倍首相の主要政策―特に安全保障関連法案について―に反対する有権者の意思が示されている。

日本国民の大部分は、2017年4月に予定されている消費税の2%増税に、哀れなことにそれが日本の社会保障システムを救うために必要かつ最善の方法であると信じながら同意している。また、強力な反対派のロビー活動にも拘わらず、消費者団体のメディアを味方につけて政権はTPPの大筋合意にたどり着いた。

そもそも、安倍首相の掲げる「アベノミクス」は人気でもなければ、成功しているわけでもない。何より、黒田晴彦日銀総裁による円安政策と狂乱的なケインズ主義政策は、日本の消費者たちを困難に陥れ、その生活水準を押し下げている。そして、それらの政策が世界的な金融市場の危機*1を近づけていることについて、国民は何も知らされていない。

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(Quoted Picture by Toru Yamanaka/AFP/Getty Images)

では、どのようにして安倍首相は参院選の決定的勝利を確実にし、最終的には有権者の過半数の支持を得て憲法改正を成功させるのだろう。その答えは、アベノミクスの第2の矢―すなわち、ちょうど米国のように政府の赤字支出を増大させ、防衛設備、オリンピック競技場、国外へのインフラ輸出、保育所や子持ち世帯への補助金といった具合にバラマキを行うことだろう。

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(Quoted Picture by Tomohiro Ohsumi/Bloomberg)

消費増税が来年に控えながら、安倍政権は国庫収支を気遣うパフォーマンスを見せつつ、実際には有効な手を打たないで放置し続けている。 William Pesekが9日にBarron’sにおいて示したところによると、OECDは日本が財政改革から逃避し続けた場合、債務のGDP比は現状の250%から400%にまで膨張すると予測している。また、OECDは昨年の日本の「国の負債」が1057兆円を記録したことにも言及した。

Pesekは2016年に起こりうる、日本の財政破綻の脅威について警告している。しかし、より現実的なシナリオはきわめて平凡な、安倍首相が選挙のために巨額な浪費に手をつけ、彼にとって神聖な、かつようやく視野に入った野望を達成することだろう。独裁に近い権力の独占が日本を本当の意味で脅威に曝していると感じているのは、筆者だけではあるまい。

www.forbes.com

 

*1:訳註:通貨安競争を意味していると思われる。