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東京オリンピック招致委員会、疑惑の取引の詳細を開示しない決定

(Translated from "The Guardian", 17 May 2016)
  • 竹田恆和会長は国会に対し、守秘義務のため開示できないと弁明
  • フランス検察当局は、シンガポール口座への200万ドルの送金について捜査中

東京オリンピック招致委員会の委員は日本国会において、疑惑がかかっているシンガポール企業への200万ドルの送金について、詳細の開示を拒否した。

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ガーディアン誌が先週送金の詳細について独占的に報道したため、フランス警察当局はマネーロンダリングおよび贈賄の疑いで2013年9月に行われた東京からシンガポールへの200万ドルを超える送金について捜査している。

送金先口座の所有者は、同じく汚職の疑惑がかかっている前IAAF会長 Lamine Diack氏の息子であるPapa Massata Diack氏と関係が深い。

日本オリンピック協会の会長であり、東京オリンピック組織委員会委員も兼任する竹田恒和氏は、契約は秘密事項であり、相手方の諒解なしには詳細を開示することができないとした。「ご指摘の契約の内容を確認いたしましたが、機密事項でした」竹田委員は国会でこう弁明した。「ですから、私は相手方の諒解なしに内容を開示できる立場にないのです」

遠藤利明オリンピック大臣は関係者に対し、問題を公に説明するよう求めた。「契約が機密事項であることは理解するが、疑惑を解決することが彼らの利益にも叶うはずだ。国民の理解を得られるよう、状況をコントロールしたい」と述べている。

安倍晋三総理大臣は月曜日、記者会見においてフランス当局の捜査に全面的に協力する意向を表明した。安倍首相はオリンピック招致の熱心な推進者であり、東京がマドリードイスタンブールに打ち勝った瞬間もブエノスアイレスに滞在していたほどだ。安倍首相は、不正行為の全容を把握していると思われる。

竹田委員は先週、200万ドルの送金は招致計画の画定、国際ロビー活動に対する正当なコンサル料金であったと主張していた。

Ian Tan Tong Hanは口座の所有者であり、WADA独立委員会の腐敗についての報告によれば、ルツェルンの本拠を置くAthletics Management & Services社にコンサルタントとして採用される予定だったという。AMS社は日本の広告会社電通と直接契約を結んでいた。

AMS社は電通の子会社であるというWADA報告書の指摘を否認している。ただし「ビジネス上の関係」があることは肯定し、ウェブサイトに発表された声明によれば「電通社とは長期的な関係があるという。f:id:nyaku37:20160517224355p:plain

口座を所有するTanは、父親であるLamine Diackが支配するIAAFにおいて長期にわたりコンサルタントとして勤務していたPapa Massata Diackと密接な関係にあると伝えられている。Lamine Diackはドーピング検査への介入を条件とした100万ユーロを超える収賄についての疑惑発生を受けてIOC国際オリンピック委員会)の名誉委員を辞任したが、なおもパリ警察の捜査は継続しており、パスポートを没収されている。

Papa Massata Diackは国際警察の指名手配下に置かれているが、なおもセネガルに逃亡しており、セネガル当局はすでにPapa Massata Diackを引き渡さない意向を明らかにしている。また、すべての疑惑について否認を続けている。

「報道されている送金は、Tan氏の会社から受けたサービスに対する我々の正当な対価だ」竹田委員は弁明を繰り返す。招致委員会の元委員であるNobumuto Higuchiは声明を発表し、「送金はルールに基づいたまったく正当なものであり、会計は全て新日本有限責任監査法人会計法人の監査を受けている」とした。

IOCマーケティング委員会の委員でもある竹田氏は、コンサルタントサービスは計画立案と国際ロビー活動、そして情報・メディア解析を含んでいたとしている。声明では「我々の見解としては、支払われた金額は正当な対価であり、疑惑をうけるいわれはないと考えている」とした。「疑惑発生に伴うIOCからの要請に従い、この声明は既にIOCへ伝達されている」

東京オリンピック招致委員会の全活動は合法的かつ正当なものであった」

この問題については、直近のIOC執行委員会が開かれる6月上旬に議題にのぼることが見込まれる。大統領停職に伴う2016年リオデジャネイロ五輪についての問題と混迷を極めるロシアによるドーピングの問題も同時に議論される見通しだ。

www.theguardian.com

ホワイトハウスへの夢―テッド・クルーズの足跡

(Translated from "CNN", 4th May 2016)

テッド・クルーズ候補は共和党の候補者指名争いを退場した。木曜日に行われたインディアナ州の予備選においてドナルド・トランプ候補に歴史的大敗を喫したためだ。不動産王は、共和党の候補者指名を獲得する夢を現実のものとしつつある。

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(A picture quoted from original article)

この日は大統領選挙の重要な曲がり角となった。党大会による決選投票は回避された。インディアナ州の投票が締め切られる瞬間まで、クルーズ候補は6月7日のカリフォルニア州選まで戦い続けると強調し続けてきた。さらに、ライバルを「病的なまでの嘘つき」であるとし、大統領にふさわしくないと攻撃していた。

しかし結局、躍進を続けるトランプ候補の勢いとクルーズ候補自身のここ数週間における躓きは、もはや逆転できないほどの差を生んでいた。クルーズ、ケーシックをはじめとする反トランプ連合はトランプ候補が必要とする1,237の代議員の獲得を妨害するために手の込んだ作戦を作り上げたが、その成否は資金と勢い次第だった。木曜日の夜、クルーズはそのどちらも持っていなかったことが明らかになった。

インディアナ州をもって、全て幕引きにしようと思う。全力を尽くしたが、有権者は別の道を選んだ」クルーズ候補は語った。「我が国の将来に対する強い関心と無限の期待ゆえに、我々は選挙から撤退するのだ」

茶会が推薦するクルーズ候補は、かつては南部州を勝ち進み、共和党内のリバタリアン勢力と福音派勢力を統合することを期待されていた。しかし結局は、クルーズ候補はこれらの期待に何一つ応えることができなかった。木曜日の夜、福音派の票はトランプとクルーズにによって二分される形となった。クルーズは有権者の4分の1を占める「レイト・ディサイダー」といわれる有権者から支持を集めたが、十分とはいえなかった。

クルーズの最後の数週間は多忙を極めた。オハイオ州知事のケーシック候補と手を結んだが、この同盟はすぐさま崩壊を見た。キャリー・フィオリーナを副大統領候補に指名したが、通常、指名からほど遠い位置にある候補が共に本戦を戦う副大統領候補を指名することはない。インディアナ州知事は一応、クルーズ候補を推薦した―ただし、トランプ候補にも好意的であった。

クルーズ候補はバスケットボールのゴールの輪を本来の"hoop"ではなく"ring"と呼んだり、応援に駆けつけたフィオリーナ氏が壇上から転落したりしたことで嘲笑の的となりつつあった。

トランプ候補によって粉砕された12の共和党候補と比較して、クルーズ候補がよく戦ったことに変わりはない。ワシントンに対して究極のアウトサイダーとしてのイメージを早くから定着させた。トランプと同じようにワシントンへの反感を追い風にすることで、トランプによる攻撃の主な標的になることを避けた。

しかし、クルーズの戦略はトランプが大統領にふさわしくない言動のために"自滅"することを前提とするものにすぎなかった。

しかし、それは現実にならなかった。

 

クルーズの支持者たちは、クルーズが先週木曜日の記者会見でそうしたように、不動産王を正面から攻撃するのが遅すぎたのではないかとの疑問を抱いている。

印象的な12月中旬のツイートの中で、クルーズは「エスタブリッシュメントは私とトランプの一騎討ちを望んでいる」と述べたうえで、「がっかりさせて申し訳ないが、トランプ候補はひどい」*1としていた。

クルーズが12月にトランプの支持率をわずかに上回ったとき、トランプは批判の矛先をクルーズに向け始め、クルーズは不意打ちを食らわされた形となった。アイオワでは踏みとどまったものの、最終的にはクルーズの防波堤になるはずだった多くの南部州を失う羽目になったからだ。

クルーズは3年前に上院議員に当選したときから、大統領への野望を隠そうとしなかった。しかし、誰がこれほどまでの短期間で駆け上がってくることを予期できただろう。共和党指導部が彼の強硬な姿勢や人目を引く言動に向けてきた敵意を思えばなおさらだ。

クルーズは候補者調整を無視して、火の玉のようにホワイトハウスを目指した。前置きはなかったが、リバティ大学の演壇に立ったときは拍手喝采に包まれた。

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クルーズの大統領への筋書きは驚くべきものであった。彼の信念によってではなく、フィリバスターを利用した政府機関閉鎖の立役者となることで政治生命を打ち立てた。まさにそのフィリバスター演説によって、彼が2014年中盤の議会選で共和党に歴史的勝利をもたらした、福音派と経済的格差に怒れる群衆との代弁者として立つ意向を示した。さらに、クルーズへのスーパーPACは3,700万ドルを記録し、ジェブ・ブッシュの1億ドルを急激に追い上げつつあった。

クルーズの強固な支持基盤と豊富な選挙資源は、共和党大統領候補選挙の歴史の一ページに刻まれることになるだろう。たしかにクルーズは道半ばで倒れたが、クルーズの批判者でさえも認めているように、彼は未来の大統領候補におけるチャンスに希望を残している。

他の共和党候補と同じように、クルーズもトランプと「遭遇」してしまったに過ぎないのだ。

トランプが2015年中旬に様々な発言によって注目されはじめたとき、クルーズはこの新参者を攻撃しなかった数少ないひとりだった。

その後クルーズは強烈なディベートによって、アイオワのみならず全国で支持を獲得しはじめた。時には共和党候補の同士討ちを仕組んでいるとして司会者を強烈に批判したこともあった。

12月にはトランプも目を付けた。トランプはクルーズの飲酒についての考え方と、信仰の真実性を問題にした。1月には、クルーズがアメリカ人の母を持ちながらもカナダ生まれであることを理由とした強烈な攻撃を開始した。

クルーズは明らかに苛立っていた。腸が煮えくりかえる、との比喩が似つかわしかった。

アイオワ州予備選の直前、クルーズはトランプの保守主義者としての適格性を問題にしていた。一定の効果があったように思われた。アイオワでは小さな勝利を飾り、続く選挙戦への道筋を示した。

ところが、淡い期待はニューハンプシャー州で粉々に打ち砕かれた。ジェブ・ブッシュとマルコ・ルビオには勝ったが、3位に終わってしまった。

そして、南部諸州への足がかりになると位置づけたサウスカロライナ州でも、クルーズは苦戦した。訴求力の限界を見せつけられた。さらに最初のスーパー・チューズデーでも、福音派の支持を固めきれていないことが明らかになった。クルーズの選挙戦にとって最大のカギとなる層さえも引きつけられていないのではないかという疑念が渦巻いた。

木曜日の夜、クルーズは信念ある保守主義に拠って立ち戦ったこれまでの選挙戦に誇りを持っていると語った。これにより共和党統一候補の座をほぼ確実にしたトランプ候補を支持するか否かについては、未だに沈黙を守っている。

 

edition.cnn.com

*1:terrificは「すごい」の意ですが、基本的に好意的な意味でしか用いられません。訳者も意味をつかみかねています